デンソーエレクトロニクス 75年史
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 第2章 2000-2007 グローバル成長の時代K3リレー 搭載箇所イメージK3リレー 生産ライン 限られた時間の中で目標を達成するために、コンカレントエンジニアリング(同時並行開発)が本格的に導入された。当初から開発・技術・品質保証・製造・生産技術などが一体となりいっせいに並走開発することで、短期間での量産化を目指した。 サイズとコストの制約の中で必要な強度や耐久性、安全性、組立性を確保することは大きな技術課題であった。シンプルな構造で小型化を実現しつつもコスト低減のため接着剤(小型化に有効)は使用せず、サイズ・コストを両立させる設計とした。またハイブリッド車や高級車などの静かな車室内でもリレーの作動音が聞こえない静音水準を目指した。可動部には制振ゴムなどを導入し、CAE解析によるシミュレーションと実測(耳で確認)を行って繰り返し調整を重ねていった。  モノづくりの観点でも様々な課題があり、それらに対応するため新工法にチャレンジした。具体的には、静音性のための「ライン直結静振ゴムのバリレス抜き&自動組付け」や、小型化のための「GP、GAの高精度精密圧入」などである。コンカレントエンジニアリングは、製造面でも大きな課題に対応する原動力となった。 開発から生産準備に至るまで、担当者も役員もプロジェクトメンバー全員が自部署本位の判断にこだわるのではなく、目標達成に向けた「本物の議論」を27「世界No.1の競争力」を目指したK3リレーの開発 1990年代後半から2000年前後にかけて、国内では自動車市場に家電リレーメーカーが参入してきた。加えて、リレーの規格をISO規格にグローバル統一する動きが強まってきた。これにより、海外リレーメーカーが日系自動車メーカーへアプローチするようになり、リレー市場は競合激化の一途をたどっていった。2000年当時、リレー事業の売上高は約110億円だったが、グローバル競争に勝てば売上倍増、負ければゼロ…という厳しい競争の中にあった。 この頃トヨタは「CCC21活動」を開始。車種間での部品共通化を図り主要部品のコスト30%減を推進、世界最安値の実現を目指していた。当社はこの過酷な要求に応えるべく、社内が一丸となって新型リレーの開発を開始した。同時にトヨタ向けだけでなく広くグローバル市場に打って出るキラー製品としても、この新型リレー「K3」を位置付け、正に生き残りをかけた製品開発を進めていった。 K3リレーの製品コンセプトは「世界No.1の競争力を持ったリレー」である。高い信頼性と価格競争力があり、コンパクトな設計で自動車メーカーの要求を満たす、ISO準拠・20Aクラスのリレーである。さらに製品価値を高めるために静音性向上も開発目標に盛り込まれた。こうした高いゴールが設定されたにも関わらず、その開発期間はわずか1年半、通常の約半分という極めて過酷なスケジュールであった。

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