デンソーエレクトロニクス 75年史
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第4章 2016-2025 大変革期を超え、次の25年に向かって山形県知事との会談(2018年6月13日)は、ボデー系少量ラインとエアコンECUの手組ライン、セミ合理化ライン、合理化ラインを移管した。  このプロジェクトで一番大きな課題となったのが「ヒト」である。生産面積が5倍近くに拡大したデンソー山形であるが、社員も240名から約2年間で550名規模まで増員しなければならない。それまで、デンソー山形には中途採用に関する制度や仕組みがなく、新しい制度を作りながらの募集活動となった。近隣の企業からの転職希望もあったが、地域共生を第一に考えれば地元他社の事業継続性に支障を生じさせるわけにはいかない。いわゆるローカルリスペクトにも配慮しながら採用活動を進めていった。 当初は地元での知名度の低さもあり、なかなか採用がはかどらなかったが、山形県をはじめ地域行政と連携した採用活動を展開することで毎月10~15名の採用を継続できるようになった。中途採用者には、数日間のデンソー山形内の教育の後、当社岡崎工場にて出向研修を実施。その期間は短くて3カ月、班長やリーダークラスの人材だと2年間に及ぶ長期出向となる場合もあることから、対象者には丁寧に背景説明を実施し、理解を得ながら採用業務を進めていった。 また、急激な人員採用により、班長や係長などリーダー役の人材不足への対応が急務となった。その対応策として、当社社員が講師となり、職制行動規範・異設備搬送時の様子(2021年1月)デンソー山形 新工場全景(2019年11月17日)常処置訓練などの教育を行った。その後は受講者であった社員が講師となって人材育成を行う自律型の教育体制を作り上げていった。 移管に伴う「輸送」においても課題があった。当社からデンソー山形に大量の設備を移管するため、2社間の長距離輸送には細心の注意を払う必要があった。岡崎市から山形県飯豊町までおよそ600kmに及ぶ道のり。この長距離を精密で繊細な設備機器を運ぶのは関係者の神経をすり減らす大仕事である。また当時はコロナ禍の真っただ中であり、往来のルートも制限されることもあったため、感染予防に努めながら苦労の絶えない移送作業となった。 このような関係者の努力のもと、2020年、デンソー山形はエアコンECUの生産を開始し、2021年2月にはデンソー山形Ⅱ期工場への移管作業が完了した。43

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